さくら・さくらんぼ保育園創始者:斎藤公子の子育て
――その継承と発展!

日脚保育園でのリズム研修を終えて
歌とリズム研修in浜田
2018年7月15日(日)・16日(月)

くさぶえ保育園
園長 前田 綾子

日脚保育園の職員の学び方は、もちろん園長の三上さんがリーダーシップをとっているけれど、本気さを感じる。

どういうことかというと、今年6月のくさぶえ保育園主催のリズムあそび講習会には保育士と給食担当の職員合わせて18名が参加した。その前5月横浜での保育総合研修にも5名参加、決して研修会場まで近くはない。4年ほど前から大阪、東京、札幌、横浜、岐阜のリズム講習会に毎回参加してくる。島根県浜田市という島根県でも山口県に近く、交通の便がとても悪い。広島から、高速バスで2時間、出雲空港からは山陰線に乗って、約時2時間、羽田からの便しかない石見空港からも2時間以上。日脚保育園の人が言うには札幌が一番近くに感じる。広島空港まで車で行き、飛行機で新千歳というのが近い、と言う。私は今回で日脚保育園には3回目の訪問だ。いろいろな交通手段をつかっても6時間はかかる。

日脚保育園の特徴はいろいろある。まず保育士さんたちの歌声が素晴らしい。だから、子どもたちもどんどん歌う。よくリズムをやっている。でも意味がわからずやってる。という印象を受けた。例えば3歳児と5歳児が同じようなメニュー。当然無理がある。子どもの発達をしっかり学ぶ機会がなかったのか、リズムの真似をしている、という印象を受けた。

でも今回、三上園長が挨拶文で「歌やリズムを通して研修を重ね、もっと奥深く内面から子どもを支え関わっていけるように勉強を続けたい…」と書いている。「子どもの奥深くから子どもの内面を支える」にはどういう保育をしたらいいのだろうか?

浜田のような地方の小さな町にも子どもたちが定型発達とは言い難い、うまく育てば、個性的な能力を秘めた子に育つけれど、うまくいかないと、社会性に乏しい、友達とうまくいかない、集団行動が苦手な子どもが何人もいる。こういう子どもたちは赤ちゃんの頃からわかる。5歳すぎてから、どうしよう…では遅すぎる。赤ちゃんの頃から必要な手立てを考えた保育実践をする。子どもを押さえつけない、子どもの意思を尊重するところから保育が始まる。そして金魚運動。脱力をさせること。何よりもまず、多動の子が担当の保育士さんを大好きになるところからスタートする。

どこの保育園でもよくある質問、具体例をあげると、1歳児で噛みつきがとまらない子がいる。どうしたらいいだろうか?という相談。答えは噛みつく子をギュッと抱っこする。噛みつかれた子の噛まれたところをナゼナゼする。決して噛みつかれた子を抱っこするのではなく噛みついた方の子どもを保育士はそばに寄せ抱きしめる。噛みつく子を責めてはいけない。というアドバイスをする。しばらくすると噛まなくなる。

ところが、噛む子に厳しく叱りなさい。という指導を受けた保育士が厳しく叱ると噛みつきはひどくなるばかりだった。という報告をうけた。保育士は学ばなければいけない。どういう指導が妥当なのか?保育士自身の判断がなければ「子どもの奥深くから子どもの内面を支える」ことはできない。悪いことをしたら罰を与える方式の育て方は乳幼児期の子どもには当てはまらない。

なぜなら、子どもは小さな大人ではない。子どもの内面、内言(内なる声)を聴くこと。聴こうとする大人が近くにいれば必ず心を開き、信頼関係が成り立つ。多動な子どもを座らせたかったら、その子どもがへとへとになるまで一緒に走り、その子が行きたいところまで付き合うこと。そうすると一緒に走ってくれた保育士が大好きになって保育士が座ったら一緒に座ってくれるだろう。今度からは一人で走るより一緒に行こう。と誘いに来てくれる。目を合わせたくなかった子が保育士の方をじっと見てくるようになる。そしてその保育士がやることを模倣し始め、一緒にやりたがる。言葉が出ない多動な子どもが好きな人の模倣を始めたら、チャンスだ。上から目線の禁止では子どもは隙を見つけて脱走する。もし脱走しても絶対叱らない。ぎゅーっと抱きしめる。それで通じる。

信頼関係をつくること。それはその子どもだけでなく、保護者との信頼関係をとることが最優先。これなくして何をやっても、何を言っても徒労に終わる。子どもの気持ち、父母の思いに寄り添うこと第一だ。こんなことは昔から言われている。でも難しい。だからこそ、親子リズムを企画した。

日脚保育園の隠れた特徴は卒園児が大人になって母校ならぬ母園に就職している保育士さんがけっこういる。地元の人と結婚後、楽しかった日脚保育園で保育士をする。子どものころは見るからにおてんばさんだったような、元気な保育士さんが子どもを産んで産休を取っている。園長の三上さんも卒園児とのこと。園児数150名の田舎にしては規模の大きい保育園。

ここでの親子リズムを提案したのは何より、父母の皆さんに子育ては楽しい。どんどん子どもをつくって、産んでほしい。赤ちゃんが生まれたら日脚保育園に預けておかあさんは長期間の育児休暇を取らず、4~6時間勤務くらいにしてもらって、赤ちゃんの時期から質の高い保育を受け、のびのびした幼児期を過ごし、この浜田を支える労働者になってほしい。ということは日本を支える労働者として活躍してほしい。という願いを込めて。

0歳から保育園に入園させることについて、赤ちゃんを持っているおかあさん達はとてもブルーな気持ちになっている人が多い。赤ちゃんの育て方がよくわからない、思いどおりにいかない、なぜ泣くかわからない。育児の悩みが多い。赤ちゃんの育て方のプロとして地元の保育園が赤ちゃんの育て方をもっと積極的に関わってほしい。子育て支援として地域に開放しているが、赤ちゃんの育ち方をもっと積極的に応援したい。そして0歳からの保育を受けた子どもたちが素晴らしく育つのが当たり前、という斎藤公子先生の保育を実践してほしい。

  • 赤ちゃんの向き癖がなおらない。
  • 何となく、目が合わないような気がする。
  • 這い這いしないでいざってるけど、いいのだろうか?
  • 這い這いしてるけど、片方の足でしか蹴らない。
  • 1歳4ヶ月になるけど、なかなか歩こうとしない。
  • 1歳過ぎたけど、口が空きっぱなしでヨダレが多く、離乳食を食べるのが下手。

などなど、赤ちゃんの育ちに悩みがたくさんある。赤ちゃんとの楽しい遊び方も、いろいろ紹介する。赤ちゃんの発達を促し、おかあさんも楽しめる赤ちゃんとの遊び方。難しいことはあまりない。こうしたことを紹介するとおかあさんは明るい笑顔でやってみます。と言ってくれる。

実際に日脚保育園の保育士さんたちは学ぶ気持ちとやる気が出てきたこと。特に若い保育士さんたちが活き活きしている。

島根県は東西に長い県で、島根に向かう日、島根原発の記事が新聞に載っていた。鳥取との県境にあるらしい。出雲市駅から山陰線の快速電車に乗って日本海を見ながら西に向かう。夏の日本海の海は美しい。海岸線をのんびりと眺めていると、突然巨大な風力発電の風車が現れる。そしてその次にはメガソーラーの看板、そして浜田に着くと火力発電所がある。

島根県の日本海沿いに日本のエネルギー問題、電力事情が順に見られるという、初めての山陰線の旅としては予想外の現実を見た。電気がなくては生きていけないけれど、日本という国はこれからどうなっていくのだろう…。

大田市にある琴が浜は全長3㎞、歩くとキュッキュッと音がする、鳴り砂と言うらしい。次に浜田を訪れることがあったら、琴が浜でぼーっと海を見ていたい。